4・14アーサー・ビナードさん講演会 204人参加

うなずき 笑いながら… 刺激を受けた2時間30分

4月14日午後、OB九条の会3周年記念、アーサー・ビナードさん講演会を開催しました。題して「最高の憲法と最低の政治の、不思議の国ニッポン」。参加者は20代から80代まで204人でした。

外国人から教えられた「豊かな表現力の日本語」
と、「ウソとペテンの言葉の本質を見抜く視点」

★ウソとペテンにだまされていませんか? 
 アーサーさんの話は痛快で面白く、アメリカ生まれ、イタリアで学び日本で生活している詩人としての感性と精神・論理構造に参加者は圧倒され続けでした。
 「彼は只者ではない」という参加者の感想の裏返しとして、日本にいる私たちの視点や感覚や行動が問われる刺激的な講演会になりました。
 「日本語は、表現できる可能性が素晴らしい言語」であることと、「20世紀最高の奇跡の日本国憲法」という言葉が何度も強調されました。日本語を母国語としているはずの参加者ですが、共感とショックの中で反省と奮起すべき気持ちを随所で噛みしめさせられました。
★「イタリアでは、読者が新聞にだまされることはない」のに、日本では…
 耳が痛いことが次々と語られました。イタリア語を学んだ時のことでは「イタリアの新聞で、読者がだまされることはない」「おかげで奥にある本質は何だろうと考えることができた」と、マスコミ報道に左右されがちな日本の民度をグサリと突かれました。
 23歳の時に来日し、イラクのクウェート侵攻、湾岸戦争となった時期で日本国憲法は知らなかったものの、アメリカでは憲法の論議はないのに日本では新聞に憲法の活字が出ていること、憲法が戦争や派兵の歯止めや制約になるということを知った時の新鮮な驚きが話されました。
 ★デモクラシー=民主主義は誤訳。正確な意味は「民主体制」
 アーサーさんから会場内に出されたクイズは「デモクラシーの意味は?」。いぶかしげに「民主主義でしょう」という声にすかさず「誤訳です」。「資本主義、社会主義、共産主義と同じように訳されて信じこまされていますが、主義は○○イズムといいます」「正解は民主体制です」と、思想的なことではなく現実の社会の姿のことであるとズバリ。
 ★イタリアの絵本から「戦争は勃発しないが、平和はすぐに実現できる」
 会場内が一段と大きく沸いたのは、イタリア児童文学のジャンニ・ロダーニの絵本『キンコンカン戦争』(講談社。アーサー・ビナード訳)の紹介で飛び出した日本語辞書にある「勃発」と「勃起」の単語。後者は日本語を学びはじめた時の余談ですが、戦争は事業であり、儲ける人がおり、武器を作っておかないと始められないから、いきなり「勃発」はしないこと。しかし「平和は元手がいらない。争いを“やめい!”と言えばすぐに実現する」。ここでも場内は大きくうなずきました。
★平和の反対語は戦争ではなく「ペテン」
 そしてまたクイズ。「平和の反対語は?」。答えがすぐに出ず沈黙の参加者に「戦争ではなく、ペテン」と、また場内は、してやられてしまいました。
 「近代以降の戦争の本質は(政権側の)PRであり、サギだ」という解説に続く、「ペテン、サギの視点で見なければ、世界はわからない」「戦争を止めよう、平和運動をやろうとしたら、ペテンを見抜くことからやらないと負けます」という指摘に耳が痛くなった参加者は少なくなかったようで、共感の拍手が大きく響きました。
 ★「奇跡の日本国憲法」を活用しよう、のアピールに大きな拍手
 「戦争のPRに負けないためには、言葉の可能性を広げることが詩人の役割」と噛みしめるように語り、参加者には「戦争のPRに負けないための道具はある」として、「表現できる素晴らしい言語である日本語」と「20世紀最高の奇跡の日本国憲法」の活用を語りかけると、また大きな拍手が巻き起こりました。
★TPPで日本語が絶滅危惧種になる   ことも解き明かされた
 TPP(環太平洋パートナーシップ協定)についても明快で、「自由貿易の名で日本の乗っ取り」「日本語の『自治』が死語となり、次に日本語が絶滅危惧種、関税障壁になっていきます」と警鐘を鳴らしました。
 ここでもクイズ。「トロイの木馬は何でできているでしょうか?」。「木製…」の声にすかさず「木は外側の部材で、腹の中は殺し屋。それが中身、本質です」と、TPPも本質をえぐって正しく理解することを強調しました。
ビナードさんは質問にも丁寧に答え、休憩をはさんでの2時間半でも足りない密度濃い講演会でした。
 
会場アンケート、感想文から

 *「ペテンタゴン」という言い回しが良かった/以前、朝日ニュースターの番組「ニュースにだまされるな」でゲスト出演していた時に拝見して、一度講演で話を聞いてみたいと思っていましたが、イメージ通り面白いおしゃべりで引き込まれてしまい、とても楽しかったです。中でも「ペテンタゴン」という言い回しがとても面白かったです。
*井上ひさし氏のフレーズを思い出した/ビナードさん講演会200名突破、大成功でしたね。これくらいの人が集まると元気が出ます。時間がたつのがあっという間で、井上ひさしの「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、ゆかいなことはあくまでもゆかいに」というフレーズを思い起こさせます。
ビナードさんの話を何回か聞いたというイトコも今回の話が一番良かったと言っていました。
著書本の販売もおかげさまで好調で、98冊販売することができました。送料を差し引くといささかの利益で、山分けには程遠い金額ですので、そのぶん会報の制作・印刷などでお手伝いさせていただければと考えております。ありがとうございました。(T.M)

 *「脱だまされない」を決意/とてもわかりやすく、かつ姿勢を正される内容でした。だまされないためには学ばねばいけない。学びの場、知る場は自分で見つけなければいけない。最近、インターネットおたく気味になっている自分ですが、これも必要とOKされた気持ちになりました。

 *日本人より日本人らしいと感動した/地域の人にも呼びかけ10人が来てくれた。甲骨文字の望月先生が「初めてしっかり聞いて、日本人より日本人らしい」と喜んでくれてうれしかった。

 *感動し、危機を痛感。できることをやります/このままたたかわなければ日本語が滅びるなんて考えもしませんでした。日本国憲法が奇跡の中でできたということも感動しました。何もしなかったら9条そのものが危ないとひしひしと感じます。私にできるささやかな活動をしていこうと思います。

*福島から避難。アーサーさんの国の原発政策批判に感謝/私は福島から子どもをこの2年間、4回避難させ、いま東京で一緒に住んでいます。アーサーさんが福島原発の件について、国が(県民、国民を)捨てていると言われたことは、私も納得しています。これを声を大にして話して下さっていること、感謝します。

*彼のように屈しない姿勢で生きようと思う/原発に反対です。TTPにも反対です。原発に至ってはチェルノブイリ事故が起きた時から反対しています。正確には事故が起こる前から反対していたと思います。原爆投下以降は日本人なら核の怖さは何かしら知らされています。チェルノブイリ事故数日後TVで放射能を含んだ雨が日本にも降るとニュースで言っていました。当時中学1年生だった私は部活動で毎日5キロのランニングが課せられていました。多少の雨ならばランニングが中止になることはないので、台風のような激しい雨なら走らずにすむのにと考えていました。ですが、その日は小雨で部活の仲間も皆走りたくないと言っていましたが先輩も走るし仕方ないと何も言わず走ったのを憶えています。
 私は今の都会の生活でも、できる限り地球に負担をかけないよう、一般に言われている“エコ”の努力はしています。しかし、自分の周りにはそうじゃない人たちもいます。
 ビナードさんの講演を聴いて中学生の時、何も言えず五キロ走った自分と今も何も言わない自分…26年間も変わらず何してるんだろうと思いました。アリメカ人であるビナートさんは日本語を愛し日本を愛し将来は広島に骨を埋めるだろうと言っていました。人類歴史上類をみない放射能汚染された日本に外国人である彼が日本の存続を危惧し戦っている姿を目の当たりにして、彼と彼を魅了した日本を築き上げてきた日本の先人方に感謝の気持ちと自分の不甲斐なさでいっぱいになりました。 (4面に続く)
 人間の経済活動が地球の破滅へ追いやっているのに、見過ごしているのはどうしてなのだろうと、一握りの人間たちの利益の追及のために地球上全てのものが犠牲になる、その一握りの人たちは自分たちの子供たちのことは考えてないのでしょうか? ゲームを楽しんでいるだけとしか思えません。
 彼らの巧みな情報操作に騙されず目を養い、ビナートさんを見習うのは大変かと思いましたが、彼のように屈しない姿勢で生きようと思いました。

(壇上の看板は、のぼり旗の文字もお願いした書家、望月翠山氏の直筆。望月さんには招待席で参加していただきました。)

◆共催「松田さんを支える会」松田恒彦さんからメッセージ
 「テレビで国民の50数%が改憲に賛成、反対は40数%と言っていました。最低の政治屋より、おろかな国民を見せられた感がして絶望感めいた気がしないでもなかった。でも今日のような草の根の運動の広がりは希望です。
私は43年前の1970年1月21日に『法大全共闘』を名乗る暴力学生たちによって生涯に残る後遺症を負わされました。相手の存在を認めない問答無用とも言うべき最大の暴力である戦争を許さないためにも日本国憲法第九条の改悪を阻止しなければと思っています。大学OBの九条の会が今日のようなビナードさんの講演会を開催することを嬉しく思っています。会の盛会を確信し、高知の地から挨拶を送ります。

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